創刊にあたって
⽉刊「eso.lab」は、株式会社えそらフォレストの社内報です。代表である細⽥洋平の⾔葉を福岡、東京、宮崎の事務所のスタッフに届けることを⽬的として企画されました。
theme「森」
(下記、kindleでも閲覧できます。)
⼈類は変わんなきゃいけない。だけど今の⽣活を簡単にはやめられない。どうしたらいんだろう!?
21世紀は、資源の有限性を意識した定常社会に移⾏するための世紀となると思うし、それができなければ数世紀先は、将来は、厳しいものになると思うんだよね。せめて、今よりも環境的にサステナブルな暮らしのほうが⼼が豊かだと感じられるようなものにしていけばいいんじゃないのか!?そういう暮らしを提案し、実現させる後押しをできないかな!? というのがえそらフォレストの事業活動じゃないかな。
こんな事業の起点となった⾔葉が⽣まれてくる以前を、もっと掘り下げて、わかりやすくみんなに伝える役割を担ったインタビュー誌です。せっかく作るからには社内に留まらず、これから出会うであろうみなさんに届けておいても損はない。むしろ、そのアウトプットは、新しい未来を拓くはずのではないかと考えて、こうして電⼦出版という形式を選択しました。⼤事なことを営々と考え続けられるキッカケになればと願って、創刊します。
⽉刊「eso.lab」編集部
⽬次
創刊にあたって
えそらフォレスト代表・細⽥洋平インタビュー
森は考える。⼈も考える。
森と⼈間は⾔葉が⽣まれる前からの付き合いです。
なぜ森を研究するのか!?
ビッグデータも森!?
⼈間は川や海と森の中間点あたりで⽣きるのが正しい!!
森ってすごく怖いですよね。
森を壊した⽂明は滅んでいます。
第⼀回インタビューを終えて。
森とカレー。
⾃然と共⽣する新しい⽣活⽂化の担い⼿となる 。
えそらフォレスト代表・細⽥洋平インタビュー
はじめに。
宗教学者である中沢新⼀さんは「⾃分の属する⺠族や共同体の外から⼈間を理解しようとしてきた⼈類学は、いまや⼈間性の外から⼈間について思考する学問へと、⼤きな転回をとげようとしている。森は考える。植物が考え、動物が考えている。それらの異なる思考に包まれながら、⼈間も⾃分のやり⽅で考えている。⼈類学と哲学はいま限りなく近い場所に⽴っている。」と⾔っています。
超成熟社会の中にあると⾔われている⽇本。⼈間の合理やワガママを思考の真ん中に置いた、⼈間ありきの資本主義には、限界が⾒えてきています。⼈間よりも、遥か昔から⽣き続けている、森や、動物や、植物の⽅が、ずっと考えている。そう考えることができれば、⽬の前に広がる森は、すべてが思考のヒントになります。⼈から学ぶことよりも、深くて、⽌めどない思考の原点が森にはあるのです。
そんな、ふかーい森のような、得体の知れない話を、えそらフォレスト代表・細⽥洋平から聞いてみた。えそらフォレストが⽣み出す「持続可能性」とは、答えの出ないことを考える⼒なのではないかと!?・・・そこらへんのことを、話をじっくり聞きだすことによって紐解いていきたいと思います。
《聞き⼿有限会社ペーパーカンパニー・中村修治》
森は考える。
⼈も考える。
インタビュー実施/2018年8⽉7⽇14時〜16時
インタビュー場所/福岡桜⼗字病院1階カフェ
森と⼈間は⾔葉が⽣まれる前からの付き合いです。
- なぜ社内報なのですか!?
本当は動画などのメディアにしたいんだけど予算がかかり過ぎるのです。以前にメディアを作ろうとして失敗しました。いろいろ制限がありますし、専⾨的な知識がある⼈もいなかったのですよね。
- 動画の難しさはどこですか?
撮ろうとすれば撮れるんだけど余計なところが出てしまいますよね。でも、その余計なところを切ると魅⼒がなくなってしまうので、それが難しかったんです。
- ⾔葉でもそれは同じでどうしても⾔葉にすると表現できないことが出てきます。
そこはがんばってください。(笑)でも、⾔葉でも表現出来ることは本当にわずかだというのは、森に⼊ればよくわかります。
- 森の中と⾔葉にどのような関係が?
森と⼈間は⾔葉が⽣まれる前からの付き合いです。⾔葉がある前から⼈間は森で仕事をしてきました。その中で⼈間は⼤変多くのことを感じて学んできましたよね。それを⾔葉にして伝えることが出来るようになったのは近年です。でも、森のなかで息を潜めるとそこには⾔語化できない何かがひそんでいるのはよくわかるんですよ。
- 確かに⼈間が⾔葉、特に⽂字を開発したのはごく最近のことに過ぎません。表現できないことが多くて当たり前かもしれません。
ですから、⼈間が⾔葉で森を語れるのは本当に少しのことに過ぎないのかもしれません。たとえば、森の中の循環⼀つとっても無数の作⽤があって、動物が⽣きるためには豊かな⾷べ物が必要ですよね。でも、その⾷べ物が育つためには動物が死んで微⽣物の⼒で分解されてそれをまた森が吸収してというサイクルが⽣まれる。⼈間は、そのサイクルを簡単に循環とか⾷物連鎖とか⾔いますけど、そんな⾔葉では表現できない複雑さがあるじゃないですか!?
なぜ森を研究するのか!?
- えそらフォレストはそのような複雑性のある森を研究していますが、どういうコンセプトで研究しているのでしょうか。
例えば家の設計をするとします。ところが設計⼀つで⾵の流れが変わるんですよ。⽊陰の形が変わるんですよ。⽔の質をどうかということもでてくる。条件をうまく組み合わせることによって光と⾵をコントロールできるわけですよね。このコントロールに森はいいお⼿本になるんです。
- 森を研究することで快適さを追求するということですか?
⾃然の摂理を⼈間の知恵で再現すると、結構快適ではないか、ということです。⽊陰で爽やかな⾵を受けながらコーヒーを飲むってたまらないほど気持ちがいいじゃないですか。そういう感覚を事業にしたいんです。暮らしに当たり前に森を持ち込みたいんです。
- 森を暮らしに持ち込むとはどういうことでしょうか?
森にはさっき話した循環もそうなんですが、森のなかにはさまざまな現象があってそれを⽣活に活⽤できるはずなんです。弊社が販売している「HANA ORGANIC」も⼥性の肌や⼼に森の気持ち良さを伝えたい、ということがコンセプトの⼀つです。そういう感覚を持った製品を開発していきたいなぁと思っています。
- 森を考えることは、事業活動や組織にも役⽴つと?
事業活動も組織も森をお⼿本にしてみたいと考えています。 森は、ヒエラルキーがなく、それぞれが勝⼿に⽣きながらも絶妙な相互依存関係によって結果として安定しているんですよ。むしろそうでなければ個別の⽣き物も森も⽣きていかれなくなる。 そこには合成の誤謬は存在できない。 これからは事業活動も組織もピラミッドではなくフォレスト、ヒエラルキーではなくホラクラシー なんじゃないかと・・・。
ビッグデータも森!?
- えそらフォレストはデータ解析もしていますが、それも森と関係があるのでしょうか?
お前の会社はどんな会社なんだとよく⾔われるんですが。(笑)通販もしているしデータ分析もしている。でも、森を研究する、森を活⽤するというところでは⼀貫しているんです。ビッグデータは森なんですよ。
- ビックデータが森とは⽐喩表現ではないのですか?
いや、まさに森ですよ。データの⼀つ⼀つはあまり意味があるものではありません。⼤量に集まって森のようになって初めて機能するものです。データの⼀つ⼀つを解析していくのではなく、データの有機的なつながりが⽣み出す多様性を観察するのが⼤事なんです。その中からサステナビリティを探していくんです。
- ビックデータから得られるサステナビリティ(持続可能性)とはなんでしょうか?
森は絶えずして⽣まれて死んでいくことで維持できています。ビッグデータもそれと同じことです。有機的な流れで構築しないとデータは死んでしまいます。そして、そのデータの中からサービスや製品の「持続可能性」の芽を⾒つけるのが使命なのです。
⼈間は川や海と森の中間点あたりで⽣きるのが正しい!!
- 最近は「サステナビリティ」という⾔葉がブームですが、森の持続可能性ってなんでしょうか?
この⾔葉が流⾏る背景にはもう地球はダメかもしれない、という危機感があります。⼈間は科学の⼒で将来の資源を前借りすることで今の繁栄があるのではないでしょうか?森も同じ事ですよ。
- 森を破壊しすぎたということでしょうか?
そうです。森は⼈間を超越した⼒を持っている。例えば森の命の循環を完全に再現することはできません。しかし、⼈間はそれを理解しないままに森を破壊してしまっていますよね。古代四⼤⽂明も森を破壊したところから⽂明崩壊が始まっている気がします。
- なぜ⼈間は森を破壊してしまったのでしょうね?
⽂明は川沿いで発展してきましたよね。だから森のことは軽視して「燃料」としてみてきたのではないでしょうか。しかし、森が⽔を蓄える⼒などを無視していた。森が衰えると洪⽔などが多発して⾷糧を作ることができなくなって⽂明が滅びてしまったんじゃないかと。
- なるほど、川沿いに⽂明が⽣まれたから、という視点はありませんでした。
本当は⼈間は川や海と森の中間点あたりで⽣きるのが正しいのだと考えています。森を研究することでその中間点を探っていきたいんです。
森ってすごく怖いですよね。
- ところで森にこだわる原点はありますか。
森ってすごく怖いですよね。森って⼈に⾒えないところが多いんです。⼈って⾃分の眼に⾒えないところは怖がりますよね?それに、森って本来誰のものかわからない。森の中の道を歩くとずっとずっと続いていく気がします。この先どうなるんだろう、何か出てくるんじゃないか、と気が気でなくて⼀⼈では歩けないですよね。真っすぐ⾏けば⼤丈夫なはずなのに。⼀⼈だけだとなにか境界を⽣きたまま超えてしまうような気がします。あれは⼈間が⼈間のままでいるのが難しいところがあります。
- 森は⼈間じゃないもののものかというのはよくわかります 。
森は森の神様のものかもしれません。⼈間があとなんです。あと、森はすごく死に近いんです。何度も循環の⾔葉を使いますが、動物が死んで森に帰る。そのサイクルは⽣でもあり死でもありますよね。森って緑のイメージがありますが実際には⿊っぽいんですよ。実際は明るくないんです。死の匂いが濃厚ですよ。でも、森は死があるからこそ豊かな⾷べ物があるんです。
− 輪廻転⽣ではないが死と⽣は繰り返すものという感覚は覚えることがあります。
⼿塚治⾍の「⽕の⿃」って漫画がありましたよね。作中で死んだら魂が何度も何度もいろいろな動物になっていく。それで最後には光の柱になっていくんですけど、これすごく衝撃的でしたよ。それ以来「循環」とか「輪廻」というものを意識するようになったと思います。それが森のなかに濃厚にあるというのはとても怖いんですけど冒険的でもありますよね。
− 冒険というと森そのものがダンジョンというか・・・
怖いけどそこの冒険的な何かがあるんじゃないかな。そして⽇本⼈はその冒険を⻑い間当たり前にしていました。森の豊かな恵み⾃体が宝なんです。縄⽂時代はその調和が取れてた気がしますね。縄⽂時代は森のなかに集落があって少⼈数で⽣きていました。それは常に危険と隣り合わせですが豊かな森の恵みをそのまま受け取れていたんですよ。
森を壊した⽂明は滅んでいます。
− ⽇本に稲作が来てからそのバランスが崩れたということでしょうか?
そうともいえます。でも、⽇本の⽥んぼって調べてみるとどこにも⽥守りの神様がいるんですよ。それでその神様がどこから来るかというと森なんですよ。
− ⽥んぼなのに森なんですか
⽥んぼって当たり前ですが川沿いとかにあります。それは洪⽔と隣り合わせでもありますが、洪⽔が起きたときに守ってくれるのは森なんです。森に逃げるから。だから森の神様が⽥んぼに降りるのも⾃然ですよね。そもそも⽔⽥ってある意味、森の代わりになっているところがある。豊かな⾃然を育むという点で⼭と川の中間点、折り合いをつけるための知恵なのかもしれません。
− それは⾯⽩いお話です。
それと、森って便利の対局にあるかもしれません。そして農耕は⼈間をどんどん便利にしてきました。森は便利という概念を腐⾷するんですね。だから⼈間はやっきになって森を開拓しようとしてきた。でも、それはタコが⾃分の⾜を⾷うみたいなものです。森を壊した⽂明は滅んでいます。便利に追われていると⼈間は滅びてしまうかもしれない。そろそろ、その揺り戻しは来ているのじゃないかな!?
地球は閉鎖系システムであって⼈類は地球にいるかぎり資源の有限性を突破できないんですよ。 例えて⾔えば゙、化⽯燃料は親の資産を⾷いつぶし、原発は⼦どもに借⾦を背負わせるようなもの。
− 森が⼈間を⽀えているという考えは近年では普遍的になりましたが、そうでもない時代もありましたね。
例えば森の保⽔効果はダムを上回ると⾔います。どれほど環境を⽀えているかがわかってきたのも近年なんですね。だから森を研究するって⼤事なんですよ。そこに⼤きな発⾒があるはずなんですよ。こういう発⾒を暮らしに持ち込んで製品化したいんです。
- なるほど、森にこだわる理由が少しだけ⾒えてきました。次回からもいろいろと掘り下げて聞いてみたいのでよろしくお願いします。
こんなのでなんとかなるの!?書籍になるの!?
-たぶん(笑)
第⼀回インタビューを終えて。
インタビューを終えた後に「eso.lab」って、研究所のことを表すのではなくて、この社内報のチャレンジも含めた思想だよね!?という話で盛り上がった。えそらフォレストは、どんどんとわかりにくくなっていく。わかりにくさの完成度が⾼くなっていく。それは「考える」ということに対して真摯である証拠でもある。考えれば考えるほど、森は深くなっていく。そうやって、えそらフォレストの事業の奥⾏きも広がっていくのだ。
第2号のテーマは「会社」になりそうである。「搾取構図から譲与構図にはいくのだろうか?」なんて問いかけが、既に細⽥洋平から投げられている。乞うご期待!!!
細⽥洋平(ほそだ・ようへい)プロフィール
宮崎県出⾝。電気通信⼤を1989年卒。⼤⼿監査法⼈での上場⽀援やシステム開発・コンサルティングに従事した後、⼤⼿化粧品通販会社の社⻑を経て、2010年当社設⽴。現在は、天然原料をつかったオーガニックコスメの⾃社ブランド「HANA organic」をECや店舗で販売するBtoC事業と、メーカー向けにコンサルティング、フルフィルメントなど通販⽀援事業を⼿がけるBtoB事業を展開する。
中村修治(なかむら・しゅうじ)プロフィール
キナックスホールディングスとペーパーカンパニーの代表。1986年、⽴命館⼤卒。94年、福岡で独⽴。戦略プランナーとして多様な企業の広報活動のブレーンとして活動。ネット上でコラムを書くと数万のアクセスを荒稼ぎ。⾃⾝のフェイスブックのフォロワー数は、約10000⼈。現在は、コラムニストとしての知名度も⾼い。